Al & Jet Loring (1)

4月16日の投稿「Our Day Will Come (続々)」に登場したデュオ “Al & Jet Loring”のことを書き留めていこうと思っている。そもそもアメリカでもマイナーなこのデュオのことを知っている日本人はいったい何人居るのだろう?最初に聴いた2010年頃はあまりネットに情報もなく書籍でも触れているものを見かけることはなかった。当時多少調べがついた事をこのブログで少しづつ書いていく。既に4か月近く間が空いたし間に別の記事が入ることもあるだろう。mixi日記も再編集してここに不定期に追加しているのでいつ完結するかは自分でもよく分からない。

この記事は上に示したリンクの続きになるので、まずはこのシングル盤を紹介しておく。発売日は1969年1月、アメリカのUnited Artists (UA)レーベル UA 50452、A面は既に紹介済みの「Our Day Will Come」、B面は「Another Mother’s Child」、AB面共にプロデュースが “Bernie Lawrence(バーニー・ローレンス)”、アレンジは”Charles Calello(チャーリー・カレロ)”だ。バーニーは歌手スティーブ・ローレンスの兄であり彼自身も2枚のシングルを1961年に残しているがヒットせず、その後60年代から70年代にはソングライター、プロデューサーとして名前が記録されている。チャーリー・カレロフォー・シーズンズのアレンジやプロデュースで有名、山下達郎が1stアルバム「Circus Town」A面のプロデュースとアレンジを依頼したかたとしても知られている。

UA 50452 B面:Another Mother’s Child

YouTubeに曲があったので貼っておく。作詞作曲はB. Levine、P.C. Silviaだがあまり有名なかたではなさそうだ。カヴァーも見つからないのでAl & Jet Loringがオリジナルなのだろう。こちらでは男声ボーカルがリードとなっている。前回の記事では「ハスキーな声は少年のようにも聴こえるしなぁ」とか書いたけどネタばらしすると正解は男女夫婦デュオ。こちらのアレンジではちゃんと大人の男女の声と判ります。

さて、UAレーベルにはAL & Jet Loring名義でもう一枚シングル (UA 50587) が同年1969年9月に発表されている。プロデュースは同じくバーニー・ローレンス、アレンジはチャーリーから”Joe Scott(ジョー・スコット)”に代わっている。今回はAB面ともカヴァー曲だ。A面「Wonderful Summer」は1963年の”Robin Ward(ロビン・ワード)のヒット曲、”B面「Teach Me Tonight」はジャズのスタンダードで初録音は1953年の”Janet Brace(ジャネット・ブレイス)”である。このシングルは”Al & Jet Loring”の活動として最後の録音となるが、その後も1977年に離婚するまでショー・ビズ界で活動を続けている。全米中をツアーし、主にラスベガスでジョージ・バーンズサラ・ヴォーンファッツ・ドミノらの前座を勤めたそうである。

UA 50587 A面: Wonderful Summer

オリジナルのRobin Ward版が深いエコーで所謂スペクター・サウンドであるのに対し、こちらはAlの男声リードにJetの女声がハモるコーラス・サウンドでなかなか良い感じ。

UA 50587 B面:Teach Me Tonight

この曲はジャズ・スタンダードなので取り上げる人も多く色んなアレンジがあるのだが、AlとJetのカヴァーは冒頭から二人のコーラス・ハーモニーを前面に、バックはソフト・ロックでドラムのビートも含めジャズ感を全く感じさせない他では聴けない唯一のアレンジ。好みのサウンドだ。

アレンジの比較用にオリジナルのほうもYouTubeで見つけたので貼っておく。

“Wonderful Summer” – Robin Ward (1963)

“Teach Me Tonight” – Janet Brace (1953)

今回はこのへんで。次回はもう少し二人の説明を入れつつ初期から順に追っていこうと思っている。