Full Circle-Roger Nichols-and-The Small Circle Of Friends

今年の1月1日にとりあげたのが1968年発売のRoger Nichols & The Small Circle Of Friendsの唯一のアルバムでしたが、締めは40年振りに発表された2ndアルバムにしようと思います。

まずこのジャケットがなかなか洒落ています。彼らの昔の写真が使われていてあたかも当時の幻の2ndアルバム、もしくは未発表音源初CD化といったような趣きですね。

ロジャー自身は1995年にROGER NICHOLS & A CIRCLE OF FRIENDS名義で「Be Gentle With My Heart」というアルバムを出しているのですが、マレイ、メリンダのマクレオド兄妹は参加していなかったので、今回12月19日に発売された「Full Circle」は正真正銘Roger Nichols & The Small Circle Of Friendsの2ndアルバムということになるわけです。

「Be Gentle With My Heart」がAORっぽいサウンドで当時の音とは程遠く、普通のアルバムという感じでしたので発売直前の各音楽関係者の方たちの絶賛の記事にも多少疑いの思いを持っていました。

広告のサイトを見ると、ちょっと地味な選曲ではあるけど、僕にとっては他のアーティストでお馴染みのものが多い感じでした。逆カバーはどんなアレンジなんだろうと発売日を約1ヶ月待ちわびていました。Amazonでオーダーしていたので、発売日の発送で、到着は翌日20日です。小売店では前日18日の晩には売っていたらしく、先に聴かれたかたの感想をmixiで見ていましたが絶賛されるかたがとても多かったです。

さて、初回の感想ですがまさに当時のThe Small Circle Of Friendsのコーラスなんだけど...あれっ?ちょっと違和感が...でも何回も聴くうちに徐々に慣れてきました。小さな不満はありますが、他のかたのおっしゃるようにやっぱりかなり水準の高いアルバムだと思います。

Musicshelfというサイトで本人のインタビューを含むこのアルバムの特集をしているので、とても参考になりました。(2022/06/27追記:残念ながら2018年3月末で閉鎖されてしまいました。)

このアルバムの収録曲は下記のとおりです。今回の発売の立役者である濱田高志氏のライナーノーツに詳しく各曲の解説が書かれているのですが、僕なりの感想も含めて書いてみたいと思います。

1. Talk It Over In The Morning

1971年にAnne Murray、Jack Jones、Engelbert Humperdinckがとりあげた曲で、その他にもShiloh Morning(1974)、Ben McPeek(1972)、Brian Gari(2006)のカバーがあります。今回この1曲目を聴いてあれっ?と違和感を覚えたのがイントロのシンセと思われるピアノと、ストリングシンセの音でした。生の音で管楽器も入れたアレンジだともっと良かったのに...。でもコーラスは昔のままで、まさに奇跡のSCOFサウンドでしたね。Anne Murray、Jack Jones、Shiloh Morning、Ben McPeekのバージョンはギターのカッティングがとても印象的なイントロから入りますが、今回の彼らのアレンジはチープなピアノの音が入ってちょっとインパクト小さいです。なお、Ben McPeekのバージョンは唯一歌なしのインストゥルメンタルバージョンでした。(2008/1/14の日記に追加しました。)

2. The Drifter

この曲でロジャニコにはまったのでまた録音してくれてとても嬉しいです!1968年の録音と同じようにピアノのシンプルなバックに極上のコーラスはまさにSCOFです。今回のほうがコーラスが厚いですね。この曲もピアノはやっぱり生ピにしてほしかったなぁ。他アーティストの音源は、1stアルバムのことを書いた日記に記載した他に、ソランジュ・エ・デルフィーヌという日本のグループのバージョンがあるのですが入手できず未聴です。

3. Let Me Be The One

この曲やっぱり1971年のカーペンターズのバージョンが最も有名でしょうね。沢山のカバーがあるのですが、コーラスバージョンを聴くのは僕にとっては今回が初めてでした。シンプルでなかなかしっとりした良いバージョンになっています。他の主なカバーは、Cathy Carlson(1970)、Paul Williams(1971)、Petula Clark(1971)、Sharon Cash(1971)、Paul Anka(1972)、Anne Murray(1973)、Shirley Bassey(1972)、Jack Jones(1974)、Vikki Carr(1974)等々、名曲なのでどのバージョンも捨てがたいです。ちょっと変わったところではAl WilsonのI Won’t Last A Day Without You / Let Me Be The One(1974)のメドレーとJohnny MathisのLet Me Be The One/I Won’t Last A Day Without You(1975)のメドレーがあります。ちなみにAl WilsonはBest盤とSingleではバージョンが全く異なります。ouston Person(1997)のJazz/Fusionアレンジのものも好きです。

4. Out In The Country

スリー・ドッグ・ナイト(Three Dog Night)の1970年のヒット曲。今回のアレンジもこのバージョンに近くオルガン風シンセが出てきますがオリジナルよりソフトなコーラスとなっています。他の音源としては、Roger Nichols & Paul Williamsのデモに含まれているのと、Paul自身のアルバム「Life Goes On」(1972)でのもの、P.K. And The Sound Explosion(1977)、R.E.M.(2003)、Brian Gari(2006)、そしてなんとThe 5th Dimensionの2007年Re-Issue盤「Soul & Inspiration(1974)」のボーナス・トラックの他、Three Dog NightのLive盤、ロンドン交響楽団との共演盤なんかがあります。謎のSKINのものはずいぶん探しているのですがまだ巡り合えていません。

5. I kept On Loving You

70年のカーペンターズの 「Close To You」で、カレンではなくリチャードがボーカルをとっていた曲です。この曲のイントロは以前から「てんとう虫のサンバ」に似てると思っていたのですが、このバージョンもシンプルなギターとピアノにボーカル&ハーモニーといった素朴な感じのアレンジです。他の音源としては、荒削りなRoger Nichols & Paul Williamsのデモバージョン、Heaven Bound With Tony Scotti(1972)、SiestaレーベルのAdmiral Achilles(2005)、Brian Gari(2006)の他、上記同様SKINのものが確認されています。

6. The Winner’s Theme

今回唯一のインストゥルメンタル曲です。メロディが「Treasure Of San Miguel」や「Poto Flavus」を思わせますが、より壮大な印象を受けます。それもそのはずで元々80年のモスクワオリンピックの為に書かれた曲とのことでした。本アルバムの中では結構お気に入りです。バックはTotoとチャック・フィンドレイのトランペットだそうです。


7. You’re Foolin’ Nobody

今まで未発表だった曲ですが、1stアルバムに含まれても良さそうなメロディとノリのいいテンポを持った曲です。アコースティック・ギターが入るところはホリー・マッカレルを思わせます。The Sundownersのようなバンドとコーラスのカバーで是非聴いてみたい曲ですね。

8. Watching You

「Twenty Miles From Home」、「Time」のような雰囲気を持つゆったりしたバラード曲です。Sandpipersに歌わせても合いそうな感じですね。1968年のMarian Loveのものがオリジナルになりますがこれは先日の日記に書いています。

9. Always You

この曲のSCOF盤をずっと心待ちにしていました。大好きな曲です。パパパコーラスを入れてほしかったのとシンセじゃなくて是非フルオーケストラとトランペットのゴージャスなアレンジで再録お願いしたいところです。 こちらも過去の日記に追記しています。


10. I’m Comin’ To The Best Part Of My Life

1973年のMama Cass ElliotのTVショウを収めたライブアルバムで歌われている曲です。ここでのベーシックトラックは当時SKYLARKというバンド(このバンドの2作目ではロジャーとジョン・ベティスの曲を取り上げている)を組んでいたデビッド・フォスターや、ジェイ・グレイドン、ジャック・コンラッド、マイク・ベアードが当時バックを担当したデモを使用しているとのことです。ママ・キャスの女性にしては低いソロ・ボーカルに比べて、マレイのマイルドなリードボーカルと、途中のハモりでより柔らかいサウンドになっていますね。(2008/1/20の日記に追加しました。)

11. I’m Gonna Find Her

おしどり夫婦のSteve LawrenceとEydie Gormeの1972年のアルバム「This Is Steve & Eydie Vol.2」に入っている曲。ほぼ同じアレンジですがスティーブのソロではI’m Gonna Find Herの歌詞の裏にホーンがかぶさる代わりに、SCOFのほうはロジャーのソロの裏にかけ合いコーラスをかぶせています。やはりSCOFのほうが柔らかい癒し系のサウンドになっていますね。他の音源としてはBrian Gari(2006)が存在します。(2008/1/13の日記に追加しました。)

12. Look Around

このアルバムの他の曲が過去の作品を取り上げていたのに対し、ラストは久々のポール・ウィリアムスと作った新曲だそうです。曲調はやはりAOR調のバラードでした。「Now」のような雰囲気もあるのでカーペンターズが歌っても合う気がします。実際カーペンターズっぽいコーラスの重ね方をしている部分もありますね。なんかどっかで聴いたようなメロディーなんだけど何に似てるのか思い出せませんでした。

このアルバムの試聴/ダウンロードできるサイトがいくつかあります。
  amazon.co.jp  Apple Music  Amazon Music

YouTube再生リスト

もう何度もこのアルバムは繰り返して聴きました。こんなにヘヴィー・ローテーションするようなアルバムは本当に久し振りのことです。仕事納め以降も毎日過去のカバー曲も含めていろいろ聴きなおしているところで大晦日を迎えました。

それでは皆さん良いお年を!来年もよろしくお願い致します!