前回に続いて森山良子の「Have You Heard The News(邦題:やすらぎの朝)」をとりあげます。
こちらも1973年のアルバム「イン・ロンドン」に収録されています。こちらの作詞はポール・ウィリアムスですが時代的にはコンビ解消直前の作品だと思われます。当時のライナーには「ポール・ウィリアムスがパートナーのロジャー・ニコルスと作った曲で、森山良子のレコーディングを聞いて、是非、と提供した」との記載がありました。カヴァーとしては同時期のライヴ録音でヴィッキー・カーのバージョンが存在しています。録音は森山良子が73年5月で7月発売、ヴィッキーが73年7月録音で10月発売なのでタッチの差で森山バージョンがオリジナルとなります。ヴィッキー・カーは、本国アメリカでは実力派として数々のヒット曲を排出してきたベテラン・シンガーで、スペイン語のアルバムも多く、ラテン語圏での人気も強いとのことです。森山バージョンがバンド・スタイルにオケをかぶせた感じなのに対し、ヴィッキー・バージョンはエレピを中心とした導入部に生オケが徐々に入って盛り上げていく感じで、後半の歌唱力もさすがといったところです。
音源情報です。
・森山良子 「イン・ロンドン」 (日本フォノグラム FX-8064)
1973年5月ロンドン録音。今回紹介する「Have You Heard The News(邦題:やすらぎの朝)」はB面3曲目に収められています。当時の洋楽ヒット曲カヴァーでカーリー・サイモンの「うつろな愛」、ロバータ・フラックの「やさしく歌って」も含まれていますが、この曲を含むそれ以外の曲は全てこのアルバムの為のオリジナルとのこと。この中のバリー・マンとシンシア・ウェルの作品「COME EASY」も彼女の録音のみしか存在しないらしいです。なお、このアルバムのもう一つのロジャニコ作品「Somethings Never Change(邦題:変わらぬ心)」は前回を参照ください。CD化は98年の単品ものと2006年「イン・ナッシュビル」との2in1のものが発売されています。
・Vikki Carr 「Live at the Greek Theatre」(Columbia 32656)
1973年7月25日から29日にかけてのグリーク・シアターでのライヴ録音盤。彼女は60年代の初めからプロのジャズボーカルとしてビッグ・バンドのシンガーを務めたりしていたようです。67年の「It Must Be Him」のヒットを皮切りに71年頃まで数枚のポップシングルをヒットさせていますが、このアルバムは当時の彼女の第一次全盛期後期のステージの全貌をとらえています。濃厚なオーケストラをバックに歌うゴージャスなひとときといった感じでショービズの世界を堪能できるアルバムです。その後の彼女はスペイン語のアルバムを80年代にヒットさせ第二次全盛期を迎え、85年、91年、94年にグラミー賞を受賞しています。
CD化は2002年にCollectableから2枚組のものが出ており現在も入手可能です。また、5枚組のCollectables Classicsセットが2006年に出ましたが、ここにもDisc2と3に、このアルバムが丸ごと収められています。
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せっかくなのでポール・ウィリアムスとロジャー・ニコルスのデモ音源もどうぞ。