謎の英国Popバンド「SILK」

ロジャー・ニコルスのカヴァーを蒐集しはじめて何年にもなる。知らないバンドやシンガーの曲をeBay他で輸入購入するのだが時々興味深いグループに出合ったりするのがまた楽しい。

今回は全く知らないSILKなるバンドが「I Won’t Last A Day Without You」のカヴァーを1972年に発表していた。一応シンコーミュージックのソフトロック本の132ページに載ってるが殆ど情報は書かれてない。

“I Won’t Last A Day Without You” – Silk (1972)

ここでのアレンジはカーペンターズの1972年のアルバムバージョンを下敷きにしているようだ。Touch Me~のメロがリチャード・カーペンターの差替えメロになっている。また、カーペンターズ自身はまだこの時点ではシングルカットしていない。男声ボーカルコーラスのアレンジがなかなか良い感じ。

さてB面がなかなか気に入った。まるでPILOTがやりそうなメロではないか!

“The Flying Song” – Silk (1972)

1:20辺りのメロが英国とPILOTを感じさせる。ハンドクラップなんか入ったらいいのに。途中からオケが入る所のアレンジも気に入ったな。

ということでこのバンドの事を2011年に調べてみたがなかなか情報は得られなかった。当時の新人のシングルはA面が売るための録音、B面が印税を自分達に入れるための自作曲というパターンが割と多い。B面の作者はS Alexanderとあるが検索でもヒットしない。ということで45CatとMusicStackで調べて実際に他のも聴いてみるしかなかった。45Catに出てなかったシングルも合わせて4枚購入してみた。45Catで発表年が1970となっていてPhilipsから出てるものは実際に聴いてみると外れだった。これは明らかに別のグループ。

CBSのレコード番号の若い順番だとこれが2枚目なのだろうか。
【2022年の調査でこれが1枚目と判明、上の2曲が2枚目のシングルだった。】

“Hey Mary” – Silk (1972)

これも英国ポップだな。最初のメロもどこかで聴いたような感じ。単調だけどいい感じの曲だ。1:20辺りでメロがビートルズっぽくなる。作者はColyer, Swettenham, Andrewsとなってる。これもなかなか検索でヒットしないが作者の一人Steve Colyerという人がこの曲を1975年のDavid EssexのProduceで出している。YouTubeにLive映像があるけどSILKのほうがいいな。この人David Martinとアン・ルイスの曲も書いてるわ。

Steve Colyer – Hey Mary

“Burn Down The Cornfields” – Silk (1972)

さてB面。なかなかコーラスいいな。ギターもかっこいい。曲間にもうひとつ違ったメロディが入るともっと良くなるのに。でもこの曲気に入った。作者はK.Walford。検索するとMy SpaceにKev WalfordというMusicianが出てくるなぁ。写真の歳からしてこの人の可能性ありだ。【2022年の調査ではMy Spaceは残骸になっていた。】

45Catには2011年当時出ていなかったCBSからのもう一枚を聴いてみる。番号からすると三枚目のシングルだ。まさしく同一のバンドだ。45Catに追加しておいた。

“Happy Together” – Silk (1973)

1967年のタートルズのカヴァーだ。これもA面なのでヒット狙いだったんだろうな。B面もなんかブラスのアレンジが1969年辺りの雰囲気の曲だ。

“Wilshire Boulevard” – Silk (1973)

これもコーラスがなかなか。ちょっとジグソーの曲っぽいかな。バックで控えめに弾きまくってるギターもいいね。気に入った。作者はK.J.Walford。21枚目のB面と同じだ。Kev Walfordでもう少し調べないといけない。

CBSから関連のEpicに移籍したんだろうな。これがたぶん4枚目。作者はAB面共にK Walford, R Blease, S Alexanderの記載がある。S Alexanderは1枚目B面の作者だ。この3人はメンバーの可能性大だぞ。

“Sing Me A Song” – Silk (1973)

A面はちょっとマイナーな感じのメロディ。またコーラスが気持ちいい。

“Freewheelin'” – Silk (1973)

B面の方がいいかな。バンド感が出ているし。

結局MySpaceのKev Walfordさんの2011年に存在したBlogに記載を発見。【注、2022年の時点では全く別のサイトができていた。Aboutの項目にSILKのことが記載されている。MySpaceの時の記述にはTony Coulsonの事も書いてあったはずだがこのサイトでは書かれていない。】メンバーは4枚目のシングルの作者3人Kev Walford、Ray Blease、Stan AlexanderとベースにDerek Marl、ペダルスティールがTony Coulsonとほぼ確定した。いずれも無名のかたがたばかり。

いずれにしても超無名のバンドが英国で出した4枚のシングル。曲が結構いいので契約が切れずに続けていられれば、なんかのきっかけでブレイクして有名になったかもと思う。

音楽関係はプロもアマも層が深いと思うし、チャンスをものにできた一握りの人だけが世に出て行くんだなと実感したと同時に当時のメンバーがメジャーでなくても今でも音楽を続けているというのがなんか嬉しかった。

【2022年追記】2011年当時はなかなか情報入手が難しかったが、今ではDiscogsにメンバーも記載されている。Ray BleaseのYouTubeチャンネルには各シングルの他、当時の未発表音源、近年のバンドメンバーとのセッションも見ることができる。SILKにはRay Blease、Stan Alexanderが今でも残って活動しているようです。KevはRay達とは別に活動中でやはりYouTubeチャンネルを持っています。