Seasons / Song For Herb

ロジャー・ニコルスのインストゥルメンタル曲第三弾は「Seosons」という曲。1970年のピート・ジョリー(Pete Jolly)の同名のアルバム(写真左)に収められています。今までのロジャーのインスト曲とはイメージがずいぶん違っていて、一言で言えば哀愁のメロディーといった感じです。初めて聴いたときにニール・ラーセンの一連の作品を思い出しました。日本人受けするメロディーで僕も大好きな曲です。この曲ではピートにしては珍しく電機楽器を使っていて、Wurlitzer electric piano, Hammond Organ, Musette, Sonovox, Accordionを使用して作成されたらしいです。この音はどの楽器なのでしょうか?シンセの様な音ですね。

この曲のカヴァーとしてはハーブ・アルパートがティファナ・ブラス名義の1974年のアルバム「You Smile – The Song Begins」(写真右)に収録しているのですが、曲名が「Song for Herb」という名前に替わっています。ロジャーがハーブのために作った曲なのかどうか、この辺りの経緯についてはネット検索では判りませんでした。ピートのバージョンに比べるとテンポが遅めで、当然ですが彼の泣きのトランペットやバックのマリンバ等でとても暖かいサウンドとなっています。

ピート・ジョリーに関してまず補足しておきます。ピートは1950年代から活躍している西海岸のジャズ・ピアニストですがアメリカではテレビ番組のテーマや映画のサントラ等でも知られている様です。父親がアコーデオン奏者だったため、3歳でアコーデオンを弾き始めて7歳でラジオ番組に出演し、8歳からピアノを始めて12歳で仕事に就いています。ショーティー・ロジャースのグループへの参加の他、自己のトリオでも活躍しRCAやMGMからアルバムを出していますが、A&Mではハーブ・アルパートのプロデュースで3枚のアルバムを残しています。A&Mでのアルバムは、ストリングスをかぶせた編曲や、ボサノバやバカラックやロジャニコの楽曲を採用したものもあり、後のCTIの布石となるようなアルバムだと思います。ピートはスタジオ・ミュージシャンとしても初期のA&Mを支えた人で、ティファナ・ブラス、バハ・マリンババンド、クリス・モンテス、クロディーヌ・ロンジェのアルバムでも演奏しているとのことです。ちなみにハーブ・アルパート自身が初めて歌い1968年にチャートで1位を獲得したバカラック作「This Guy’s In Love With You」のイントロのエレキ・ピアノは彼が弾いています。


音源情報です。

・Pete Jolly 「Seasons」 (A&M SP3033)

1970年のピートのA&Mでの3作目。当時のLPだとB面の1曲目に収められています。他のアルバムでのピートはジャズピアニストとしての演奏ですがこのアルバムはマルチ・キーボーディストとしての一面が見られる唯一のアルバムで70年代中期以降のクロスオーバー/フュージョンの先駆けといってよいかと思います。タイトル曲以外ではかなりアバンギャルドな面もあります。ヒップ・ホップねたで人気が出たためか2007年にCD化されています。ちなみにA&Mでの3枚は下記になりますがCD化されているのはこの1枚のみ。
  1. 「Herb Alpert Presents Pete Jolly」 A&M SP-4145 (1968)
  2. 「Give A Damn」 A&M SP-4184 (1969)
  3. 「Seasons」 A&M SP-3033 (1970)
個人的にはA&M2枚目の作品で聴けるスウィンギーなジャズ・ピアニストとしての彼が気に入っています。また、1枚目の作品ではロジャニコの「Love So Fine」がカヴァーされています。
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・Herb Alpert & The Tijuana Brass 
      「You Smile The Song Begins」
 (A&M SP3620)

1974年のティファナ・ブラスのメンバー変更後のカムバックアルバム。「ソング・フォー・ハーブ」はB面のラストに収められています。ギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」、ガトー・バルビエリの「ラスト・タンゴ・イン・パリ」、バカラックの「プロミス、プロミス」「フライトゥン・ハー・アウェイ」なんかも入っていて結構良いアルバムだと思うのですが2008年3月時点で未CD化なんです。【追記:2016年にCD化されました】全体の音は過去のマリアッチ・サウンドを踏襲しているのですが後のクロスオーバー/フュージョンの香りもちょっとだけ見えたしたりして時代の流れが感じられます。
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ちなみにピートの「Seasons」は写真のコンピレーション「The Get Easy! Sunshine Pop Collection」で聴くこともできますが現在廃盤になっているようです。このコンピはソフト・ロックの有名な曲が多く網羅されており、入門としてはうってつけの2枚組CDと思います。曲目リストはコチラ