【2022/6/25改訂】
2007年発売されたロジャニコの40年振りの新譜『Full Circle』の1曲目を飾るこの曲は1971年にアン・マレー(Anne Murray)がシングルカットしてBillBoardの週間チャートで最高57位を記録し、アルバムのタイトル曲にもなっています。また、同年ジャック・ジョーンズ(Jack Jones)がシングルB面、エンゲルベルト・フンパーディンク(Engelbert Humperdinck)がアルバムでとりあげており、その他にもベン・マクピーク(Ben McPeek、1972)、エドワード、ハーディング&ジョージ(Edward, Harding and George、1972)、シロー・モーニング(Shiloh Morning、1974)、ブライアン・ガリ(Brian Gari、2006)等々のカバーが存在する小ヒットながらも人気のある曲です。
音源情報です。
・Anne Murray 「Talk It Over In The Morning」 (Capitol ST 821)
カナダ出身の女性歌手アン・マレー、元々はカントリー歌手ですがポップスも歌います。ヒット曲には「スノー・バード」、「辛い別れ(You Needed Me)」等があります。このバージョンが最も早くリリースされてるのでオリジナルということになります。アルバム先行シングルは1971年8月、アルバムは9月のリリースです。カナダのカントリー・チャートでは1位を獲得しています。曲のアレンジはイントロのギターのカッティングから完全にノックアウトですね。アルバムには「Let Me Be The One」、「You’ve Got A Friend」なんかも入っています。
CD化音源としては1998年に2in1CDとして「Straight, Clean & Simple」とのカップリングのアルバムで聴くことができますが在庫が少なくなってきている様です。<amazon.co.jp>
・Jack Jones 「Let Me Be The One / Talk It Over In The Morning」 (RCA 74-0475)
スタンダード・ヴォーカル歌手ジャック・ジョーンズのRCA時代のシングル盤B面に収録されています。A面の「Let Me Be The One」が他のアルバムやCDのベスト盤で聴けるのに対しこの曲はCD化されておらず残念なことにこの盤でしか聴くことができないようです。このバージョンもアンのバージョン同様ギターのカッティングで始まります。若干アップテンポでノリの良いところがなかなかですね。ジャックのRCA時代のアルバムにはポップス曲を良いアレンジで収録しているものが多数あり、管理人も数枚所有していますが結構お気に入りです。
・Engelbert Humperdinck 「Anoter Time, Anoter Place」 (Parrot 71048)
エンゲルベルト・フンパーディンクって芸名だったんですね。てっきりドイツ辺りのかたかと思ったら1936年生まれのイギリス人でした。トム・ジョーンズよりはおとなしめの歌唱ですがアンディ・ウィリアムスよりはワイルドな彼、ロジャニコ作品はマイナーな曲を数曲とりあげています。このアルバム”Another Time, Another Place“にはもう1曲「Twenty Miles From Home」も収められているので要注意なのです。さてここでの「Talk It Over In The Morning」はA面4曲目で邦題「朝日ある間に」となっています。他の人のカバーとアレンジがずいぶん異なっていて、トランペットのイントロから始まるゴージャスな雰囲気となっています。ちなみに僕の所有しているのは国内盤(キングから発売されたロンドンレコードSLC 378)で71年当時2000円で出ていたもの。中古屋さんで探せば安く手に入るのではないでしょうか。初CD化は2009年で”Another Time, Another Place / In Time”として2in1で発売されました。<amazonで確認>
カナダでアン・マレーがこの曲でカントリー・チャート1位をとったこともあり、カナダ国内で人気があるようです。カナダでのカヴァーをいくつか紹介しておきます。
・Harry Pinchin And Tommy Banks Orch. 「Lets Talk It Over In The Morning」
(CBC Radio-Canada Broadcast Recording PSE 7106)
カナダのラジオ局のレーベルです。放送音源なのでしょうか。A/B面2曲づつの45回転シングルでA面が Harry Pinchin And Tommy Banks Orch. B面は Charles Dobias And Tommy Banks Orch. です。A1が Lets Talk It Over In The Morning、タイトル頭に Lets が付いているのはこのバージョンのみしか知りません。ここではボーカル抜きのイージーリスニングのアレンジになっています。1971年のリリース。トミー・バンクス・オーケストラをバックにトランペッターのハリー・ピンチンがメロディを奏でます。Wikiを見ると2人ともカナダでは有名な音楽家のようです。この演奏は2011年にトミー・バンクス名義の「In the Middle Of the Road」としてCD化され、2022年時点ではダウンロードやストリーミングでも聴くことが可能です。
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・Ben McPeek 「Peace Train」 (RCA CASX2553)
ソフト・ロックファンにはミューチャル・アンダースタンディング(MUTUAL UNDERSTANDING)での参加で知られるベン・マクピ-クですが、彼は作曲家、アレンジャー、ピアニストとしてカナダのポップス界の重鎮なのだそうです。1972年リリースのこのアルバム「Peace Train」は彼のポップス・オーケストラと女性コーラス隊(クレジットには書かれていないが噂ではミューチャルのメンバーらしい)による当時のポップス(キャット・スティーブンス、バカラック、ビートルズメンバー、レオン・ラッセル等)をインストゥルメンタル・アレンジしたもの。A面3曲目に収められているこの曲はサックスがメロディをリードし、バックのコーラスやストリングスが素晴らしいイージーリスニングの世界を構築しています。未CD化作品。
・Edward, Harding And George 「Half & Half」(Celebration CEL 1870)
カナダのソング・ライター・チーム、Don EdwardとWilliam HardingのデュオにGeorge Korenkoを加えた1972年リリースのアルバム「Half & Half」。2本のアコースティック・ギター、エレキ・ベースとコーラスというシンプルなアレンジ。CSN&Yをお手本にしているのでしょうか。このアルバムの10曲中カヴァーは2曲で、本作ともう一曲はCSNの「青い眼のジュディ」(Suite: Judy Blue Eyes)でした。2017年にCD化され、2022年時点ではダウンロードやストリーミングでも聴くことが可能です。
・Marty Gillan 「Talk It Over In The Morning」 (CBC Radio-Canada Broadcast Recording LM 163)
カナダのシンガー・ソング・ライター、マーチン・ギランが1973年にCBC Radio-Canada Broadcast Recordingで収録した4曲入りEPです。B1が Talk It Over In The Morning となっています。ギターカッティングからのイントロではなく管楽器を使った独特のフレーズから始まります。楽器としてはピアノが結構目立つ感じですかね。音源としてはこのEPのみで他には出ていないようです。
ちょっと変わったところでスペインでのカヴァーを紹介します。
・Goyo 「Load / Talk IT Oven In The Morning」(Spiral DS-1033)
1972年にスペインでリリースされたスペイン語バージョンです。このシンガーについての情報は殆どなく、discogsとここぐらいしかありませんでした。音源もこれのみと思われます。
・Shiloh Morning 「Shiloh Morning」 (TRC 51053)
経歴とかも良く判らない女性1名を含む5人組バンドの1974年作品で、レーベルもマイナーなTRCというところから発売されています。アコースティック・ギターとコーラスを主体としたフォーキーな曲や、もろカントリー曲、プログレのムディー・ブルース「サテンの夜」等を取り上げたり、結構バラエティにとんだアルバムです。楽曲を特徴づけているのはストリングスの代わりに使用しているメロトロンだったりもします。後述する1曲目の「Riverside」で完全にノックアウト状態なのですが、「Talk It Over In The Morning」も負けていません。アレンジはアン・マレーのものに非常に近いのですがベース、ドラム、アコースティック・ギターと、フルート、ストリングスにメロトロンを代用しているところが逆に斬新に聴こえます。
上記のアルバムは残念ながら未CD化なのですが、マニアの間では90年代に出たアナログ音源を集めた(「Always」の日記にも記載した)CDコンピ(The Melody Goes On Vol.2、Roger Nichols Song Book)に収められたものが有名だと思います。
・Brian Gari 「Gari Sings Roger Nichols & Paul Williams」 (Original Cast Record)
2006年に発表されたブライアン・ガリのCD「Gari Sings Roger Nichols & Paul Williams」の7曲目に収められています。ガリに関しては「I’m Gonna Find Her」の日記を参照いただければと思います。ここでのアレンジはシンプルな楽器構成でのアレンジとなっています。打ち込みかもしれませんね。<amazonで確認>
・Roger Nichols & The Small Circle Of Friends 「Full Circle」(VICP-64023)
Roger Nichols & The Small Circle Of Friendsの40年びりの2ndアルバム「Full Circle」の1曲目に入っています。オリジナルがアコースティックギターの印象的なカッティングをイントロにしているのに対しエレキ・ピアノがかぶせてありちょっとインパクトが低下ですかね。マレイとメリンダのコーラスが40年前と変わらないところが泣けます。
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・Roger Nichols & Paul Williams 「Talk It Over In The Morning (Demo)」(ALMO/Irving)
ロジャーとポールがこの曲を売り込みに使ったデモ音源のアセテート盤です。1970年か71年の録音と思います。この音源は2016年の「Treasury」で日の目を見ることになりました。ボーカルはポール・ウィリアムスです。
★おまけ★「Reverside」という曲
さて、上の<一段目の写真>は池田正典のソロ・ユニット、Mansfieldの1stアルバムですが、9曲目に究極のロジャニコカバー「Love So Fine」が入っています。この曲でフューチャーされているのはカジヒデキ & 土岐麻子、土岐麻子はかつて山下達郎のツアーバンドでサックスを吹いていた土岐英史の娘さんで...というのはさて置き、この日記で取り上げているShiloh Morning<二段目の写真>の「Talk It Over In The Morning」がバックで聴こえるのが判りますよね。さらに同じくShiloh Morningのアルバム1曲目「Riverside」がまんまMixされています。この「Riverside」は先日の日記でも取り上げたAmericaの1971年の1stアルバム<三段目の写真>の1曲目を飾る曲がオリジナルなんです。すなわちロジャニコの「Talk It Over In The Morning」のカバー、アメリカの「Riverside」のカバーにロジャニコの「Love So Fine」の歌詞を載せたカバー三つ巴作品ということになりますね。一粒で三度おいしい!はっきりって脱帽です!アメリカの「Riverside」もギターとコーラスが心地良くて好きなんですがShiloh Morningバージョンの方がかっこよすぎです。