Treasure Of San Miguel

ロジャー・ニコルスのインストゥルメンタル曲は何曲か知られていますが「Treasure Of San Miguel(サン・ミゲルの宝)」はそのうちの最も初期に作られた曲で、1966年のA&Mへのオーディションに送られた4曲のうちのひとつです。A&M副社長のハーブ・アルパートはこの曲を気に入り、自身のティファナ・ブラスの1967年のアルバム「Sounds Like(悲しみの町)」(写真左)の中の1曲として採用しました。マカロニ・ウェスタンと人形劇サンダー・バードの曲を合わせたような面白い雰囲気で何故か印象に残る曲だと思います。なかなか歌詞のつけられないような複雑なメロディとイントロのタイトなドラムの入り方が好きです。

1968年にはブラジルのジャズ・トロンボーン奏者で後にアメリカに渡りアイアートやフローラ・プリム等と活躍するラウル・ジ・スーザによってカヴァーされています。彼は自国ブラジルのジャズ/ボサノバ界で、50年代から自己のコンボやセルジオ・メンデスのグループで活躍していました。「International Hot」(写真右)は彼の単独アルバムでは無くグループ「ハウルジーニョ&インパクト・オイト」としてブラジルのサン・パウロ市で録音されたものです。このアルバムのA面1曲目とB面6曲目つまりオープニングとエンディングで演奏されている「Tesouro de São Miguel」がポルトガル語でのタイトルです。ちなみにアメリカでラウルという名前で活動する前はハウルジーニョと名乗っていました。


音源情報です。

・Herb Alpert & the Tijuana Brass 「Sounds Like」
 (A&M LP124/SP4124)

1967年6月発表のハーブ・アルパートとティファナブラス名義の8作目。当時のLPだとB面の3曲目に収められています。このアルバムはバート・バカラックの『カジノ・ロワイヤル』も収録されていてビルボードのアルバム・チャートで1位を記録しています。何回もCD化されているので容易に購入できると思います。
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・RAULZINHO IMPACTO 8 「INTERNATIONAL HOT」
 (EQUIPE/EQC859)

1968年のハウルジーニョとインパクト・オクテット名義の唯一のアルバム。当時ブラジルのEquipe(エキペ)レーベルから出ていたようです。踊れるサウンドを意識して作った作品でしたが誰も踊ってくれず(当時は斬新な音だったのでしょう)バンドは1年で解散してしまったそうです。その後ラウル名義でUSからソロアルバムが出るまで6年も待たねばなりません。このアルバムは2002年WhatmusicレーベルよりLPとCDで再発されています。
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なお、ハーブのほうのバージョンはまたまたいつものコンピレーションにも収められています。写真の2枚は「Always You」の日記にも書いたものですのでそちらもご覧いただければと思います。左が1994年に発売された「The Melody Goes On # Soft Rock Volume 2」、右が「Roger Nichols Song Book」です。


【追記:2022/06/14】YouTubeで発見した他のカヴァーを追加しておきます。

Treasure Of San Miguel – The Lovejoys(2010)


Treasure Of San Miguel – Sinusic(2019)

Rogerの「Treasury」(2016)から。